温泉供給システムの概要
弊社の源泉から揚湯した温泉を、どのような仕組みでお客様に給湯しているのか、各施設の役割をシステム図でご覧ください。
各施設が、どのような役割をしているのか判りやすく説明しましょう。
◎温泉スケール防止装置
・SPAエンビック・システムを採用
・このシステムの特徴
・スケールはなぜできるの
◎自然流下方式
◎エアーリフト方式
◎エアコンプレッサー
◎湯井戸施設
◎湯井戸孔井構造図
◎水井戸施設・水中ポンプ
◎櫓・ウインチ施設
◎貯湯槽
◎貯水槽・高架水槽
◎温泉送湯管系統図
温泉スケール防止装置
- SPA-エンビックシステムを採用
- 温泉は、天地自然の恵みであり、地球環境に最も優しいエネルギーとして広く人々に愛されております。
しかし、温泉が十分な温度、湯量などに障害を起こさないものであれば、まさに天地自然の恵みであるといえますが、このような理想的な温泉は、なかなか得られるものでなく大なり小なり何らかの問題を抱えているようです。
当源泉も、供給開始以来、長年に亘り源泉の楊湯管等に付着するスケール(炭酸カルシウムの結晶)に悩まされ、2ヶ月に1回、約450mに及ぶ揚湯管とエアー管をそれぞれ新しく取り替えなければ、揚湯量が確保できず、湯量が減少し、管引上げ工事時には一時ストップし、お客様に大変ご迷惑をおかけし、安定供給上ネックとなっておりました。
このため、他社源泉の対策事例を視察したり、各業社スケール防止機器を長年に亘り検討した結果、当源泉の成分からして「SPA-エンビックシステム」が最も効果的との結論にいたりました。
2007年5月に、このシステムを採用したところ、揚湯管・エアー管取替工事の間隔も伸び、スケールによる湯量の減少も改善され、効果が出ております。
- このシステムの特徴
-
- スケール化を抑制します――温泉の安定供給の確保が図れます
炭酸カルシウムの菱面体結晶が変形し、球晶にされることによりスケール成長が抑制されます。 - 泉質は変わりません
従来の温泉成分に極めて微量のリン酸(数PPM)が加わるだけで泉質そのものを変えることなく
また、水(温泉)に溶けても中性ですので、PHも変わりません。 - 安全です
二種類のスケール防止剤(液体と固体)の相乗効果で温度条件の厳しい源泉でも効果的です。
◦固形スケール防止剤(ポスパ#20――重合燐酸塩を主成分とするガラス球状固形剤です)
◦液状スケール防止剤(スパロン#50――耐熱性、対加水分解性に優れた液状燐酸塩化合物)
主成分は、ポリリン酸塩で食品添加物規格適合品(無色透明・無味無臭)です。古くより防錆剤・スケール防止剤・キレート剤としてとして身近に使用され、特殊用途に開発した物ではございません。
防錆剤(給水用赤水防止)として厚労省より使用が認められ、安全性が高いことが明らかです。
- スケール化を抑制します――温泉の安定供給の確保が図れます
- スケールはなぜできるの
- 揚湯管や送湯管に付着するものは、一般的に湯垢・湯の花(華)・温泉沈殿物等といわれています。
温泉のスケールは、温泉にもともと溶け込んでいた成分が温度や圧力の変化、空気との接触、管に反応して水に溶けにくい物質が付着したものです。当源泉のカルシウム質スケールは、石灰華ともいわれ、地下で加圧状態で沈殿物の成分が溶けた状態になっていますが、これがエアー管からの空気に触れますと温泉水中から炭酸ガスの一部が空気中に逃げて炭酸カルシウムが付着するわけです。
自然流下方式
温泉供給は、大きく分けて、圧送方式と自然流下方式に分けられますが、弊社の温泉供給は、源泉事業所から下流は、道路等を経由し、延長約1,200mに渡り、高低差約90mを自然流下方式で供給いたしております。このため、送湯管の老朽化や、スケールの管内付着等により、下流のお客様には、送湯量が減少し、安定的な供給ができなくなる状態が生じますので、必要に応じ、あるいは定期的に送湯管の取替や、漏水箇所のチェック等に日夜取り組んでおります。
なお、源泉事業所から上部のお客様には圧送方式で供給いたしております。
エアーリフト方式
温泉は、一般的に自然に湧き出す自噴と温泉を低いところから汲み上げて高いところに押し上げる エアリフトポンプ方式、水中モーターポンプ方式、そして渦巻きポンプ方式に大別されます。弊社の場合は、地上に設置された水冷圧搾機から圧搾空気をエアー管で地下445mまで送り、その力で地下の源泉を揚湯管を通し汲み上げる方式をとっております。
源泉が高温のため、このエアーリフト方式が有効であり、水中ポンプ方式等では、ポンプそのものが高温に耐えられないのが実態です。
エアーコンプレッサー
弊社の圧搾機(コンプレッサー)は、50年余に亘り活躍している平山製作所製の「水冷式横型3段式圧搾機」を2台備え付けております。1台(昭和41年製)は通常時の主機として稼動、もう1台(昭和51年製)は、万一の場合の予備機として設置しております。最近空冷式の圧搾機も出ているようですが、こと温泉汲み上げには、大変な名機であり、メンテナンスをしっかり維持すれば、故障も少なく殆どの温泉供給事業者がこれを取り入れています。
ただ、新規完成製品の生産を既に中止しておりますので、部品の特注等メンテナンスに苦労いたしております。大切に、まめにメンテナンスを継続しなければなりません。
湯井戸施設
湯井戸施設は、昭和39年4月頃から掘削開始し昭和40年8月掘削完了しました。地下460mまで掘削し、水止め管としてケーシングパイプを約230m布設、その下は岩盤を掘削した形となっております。
このケーシングパイプは、以降2回ほど取替工事を行っております
この中に、源泉を揚げる揚湯管(通称、SGP白ガス管)を約450m布設、更に中央部には、コンプレッサーからの圧搾空気を送り込むエアー管(通称、SGP白ガス管)を約445m布設いたしております。
圧搾空気によりリフトアップされた源泉は、揚湯管を経由し、地上に湧き出ます。
この揚湯管とエアー管は、源泉の成分によるスケール付着のため2ヶ月に1回引き上げ取替工事を行ってきましたが、現在はスケール防止装置等により取替工事が減っております。
これら施設を称して、湯井戸施設といっております。
湯井戸孔井構造図
水井戸施設・水中ポンプ
水井戸施設は、源泉が高温であるため、創業以来、近隣に井戸を掘削し、井戸水を汲み上げ、自動制御で源泉と混合しております。水井戸は、2基保有しております。管轄小田原保健所の許可をえ、1号は、創業時に地下約150mまで掘削し、2号は、昭和63年、地下約120mまで掘削しております。平成25年6月には、水中ポンプを取り換えました。更に令和5年(2023年)6月 新たに取替しました。
ただ、1号水井戸は平成20年2月不調のためこれを撤去し、平成20年8月、別の場所に120m掘削し新水井戸1号として稼動。更に令和5年(2023年)6月 新たに取替しました。
湯井戸同様ケーシングパイプを布設し、内部に揚水管を布設し下部に水中ポンプ(川本ポンプ製)を取り付け、これにより揚水管内部を汲み上げる方式です。
これを称して、水井戸施設といいます。
なお、汲み上げた井戸水は、地下の貯水槽に一端貯めておき、必要に応じ自動的に高架水槽にリフトアップされます。
櫓・ウインチ施設
湯井戸施設内の揚湯管やエアー管を取り替える際、重さ約5トンの揚湯管の引き上げやエアー管の引き上げになくてはならないものです。櫓(やぐら)はこれら重量物を支え、ウインチはこれら重量物を引き上げるために必要です。
また、ケーシングパイプの引き上げや、湯井戸施設の保守管理そして改修・補修工事になくてならないものです。
貯湯槽
貯湯槽は、2基あり、容量は、それぞれ50トン、50トンです。構造は、外壁ブロック造、内側は鉄筋コンクリート造で、内壁にはFRPの上に、ウレタン保温層を施し、更に防水セメントと塗膜防水を施しています。源泉からの約90度の温泉水に、必要に応じ水井戸からの井戸水を混合し、貯湯槽で約65度程度に保ち、お客様との分岐管で約50度を目安に供給いたしております。
貯水槽・高架水槽
貯水槽は、水井戸施設よりリフトアップされた井戸水を一端貯めるための施設です。機械室地下に埋設され、構造は鉄筋コンクリート造で、貯水量は約13.5トンです。
貯まった井戸水は、自動制御で必要に応じポンプアップし、高架水槽(FRP製)に絶えずが貯まるようになっております。ここから貯湯槽に必要量の井戸水が送り込まれ、源泉と混合される仕組みとなっております。
温泉送湯管系統図
弊社の温泉は、源泉事業所(海抜715m)の貯湯槽から延長距離約1.2km下流(海抜627m)まで、約90mの高低差を自然流下方式で送湯管を経由して皆様にお届けしています。分岐先での泉温は、原則約50度としています。自然の恵みですので、季節や諸事情により変化いたしますが、安定供給に心がけております。*送湯本管は、A系統、B系統の2系統に分けてお送りしております。