神奈川県の温泉
- 神奈川県は、わが国有数の温泉県です。
神奈川の温泉は、産状により火山性温泉と非火山性温泉に分けられ、さらに非火山性温泉は深層地下水型と化石海水型に分けられます。
火山性温泉は、箱根火山など第4紀(二百万年前以降)の火山活動で形成された温泉で、地下のマグマだまりから火道(マグマの通り道)を通って上昇した熱水です。
箱根温泉・湯河原温泉がこれにあたります。
深層地下水型は、高温岩体(とどまったマグマ)から断層を通って上昇した熱水で、熱水作用の名残である丹沢山塊の温泉です。中川温泉・七沢温泉がこれにあたります。
また、帯水層(水が流れやすい層)の水が地熱で温められたものもこの分類の入ります。
化石海水型は、大昔の海水が地層中に長い間閉じ込められてできた温泉で、鶴巻温泉・横浜綱島温泉がこれにあたります。 -
強羅温泉の特色
- 強羅温泉は、1894年(明治27年)早雲山(大涌谷)からの引き湯で温泉開発が始まるまでは、荒涼とした草原台地でした。
1912年(明治45年)以降本格的な開発が始まり、1914年(大正3年)日本初のフランス式整形庭園の強羅公園が開園。1919年(大正8年)登山電車が強羅まで開通。ケーブルカーの開通とともに別荘地として発展した地域です。
箱根17湯の1つといわれますが、自然に湧出する温泉は少なく、1930年(昭和5年)9月箱根温泉供給株式会社が設立され、大涌谷の噴出蒸気(火山性ガス)と仙石原イタリ湿原地帯の水を利用した大規模な蒸気井造成温泉が主流となっております。
箱根登山鉄道も同様の手法で蒸気井造成温泉を同地域への供給しております。いわゆる「イオウ泉」といわれるもので、硫黄の臭う酸性の造成泉です。
弊社の温泉は、地下460mからリフトアップした天然の温泉で、アルカリ性の無色透明無臭の美肌の湯として強羅地区では数少ない自然の恵みです。 -
温泉法上の温泉とは
- 温泉法は、終戦直後できた古い法律であり、地中より湧出する温水,鉱水、および水蒸気、その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。
「温度又は物質」ということは、このどちらかの条件を満たせばいいことになる。つまり、温度それも源泉の時点で25度以上あれば法律上「温泉」として認められることになる。
25度以下であっても、別表19項目のうち1つでも物質の規程の量を満たせば法律上は「温泉」と認められる。つまり、19項目の物質を全く含んでいなくとも温度が25度以上であれば、それも「温泉」として法律上は認められるわけです。- 温泉法の概要
制定 : 昭和23年第2回国会において成立。
同年7月10日公布、8月9日施行(昭和23年法律第125号)
最終改正 : 平成13年6月27日法律第72号(平成14年4月1日施行)
目的:温泉の保護とその利用の適正化、公共の福祉増進(第1条)
*本来の「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水等で、泉源温度25℃以上又は規定物質のいずれかを規定量以上含有するもの(第2条、別表) - 温泉の保護
<温泉の掘削等の許可制>
温泉の掘削・増掘、動力の装置は、都道府県知事の許可が必要
(第3条~第9条)
・掘削等のゆう出量、温度又は成分に影響を及ぼすと認める場合は不許可
・掘削等の許可の有効期間は2年間
<知事による温泉源保護の措置>
・温泉源を保護する必要があると認めるときの温泉採取制限命令(第10条)
・多目的掘削で温泉ゆう出量等に著しい影響等ある場合の影響防止措置命令(第12条)
・温泉のゆう出量等や利用状況に関する報告徴収、立入検査(第30条、31条) - 温泉の利用
<温泉の公共利用の許可制>
公共の浴用・飲用には、都道府県知事又は保健所設置市(区)長の許可が必要(第13条)
・温泉の成分が衛生上有害であると認める場合等は、不許可
<温泉の成分、禁忌症等の掲示>
温泉施設に、温泉の成分、禁忌症、入浴・飲用上の注意の掲示を義務づけ(第14条)
・掲示は、登録分析機関の行う温泉成分分析の結果に基づく
・掲示内容は、都道府県知事等に届出、知事等は健康保護のため必要な変更の命令
注)温泉の適応症(効能)は、掲示義務の対象外であるが、知事等が適正化の指導。
<国民保養温泉地の指定>
環境大臣は、温泉の公共的利用増進のための地域を指定(第25条)
環境大臣又は都道府県知事は、温泉利用施設等の改善に関し必要な指示(第26条) - 別表
1.温度(温泉源から採取された時の温度とする。)・・・摂氏25度以上
2.物質(下表に揚げるもののうち、いずれか1つ)物質名 含有量(1kg中) 溶存物質(ガス性のものを除く。) 総量 1,000mg以上 遊離炭酸(CO2) 250mg以上 リチウムイオン(Li+) 1mg以上 ストロンチウムイオン(Sr++) 10mg以上 バリウムイオン(Ba++) 5mg以上 フェロ又はフェリイオン(Fe++,Fe+++) 10mg以上 第一マンガンイオン(Mn++) 10mg以上 水素イオン(H+) 1mg以上 臭素イオン(Br+) 5mg以上 沃素イオン(I+) 1mg以上 フッ素イオン(F+) 2mg以上 ヒドロひ酸イオン(HAsO4++) 1.3mg以上 メタ亜ひ酸(HAsO2) 1mg以上 総硫黄(S)
(HS–+S2O3+++H2Sに対応するもの)1mg以上 メタホウ酸(HBO2) 50mg以上 メタケイ酸(H2SiO3) 50mg以上 重炭酸そうだ(NaHCO3) 340mg以上 ラドン(Rn) 20(100億分の1キュリー単位)以上 ラヂウム塩(Raとして) 1億分の1mg以上
- 温泉法の概要
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泉質の判定
- 温泉の分析は、温泉法に規定された登録分析機関が行っています。
強羅温泉の場合は、小田原市入生田586 神奈川県温泉地学研究所(0465-23-3588)がこれにあたります。
温泉の泉質は、化学成分の量の割合によって決まります。
1.水素イオン 1mg/kg未満(pH3未満) ――――――― 酸性泉
2.溶存物質総量1,000mg/kg未満で、温度25℃以上―― 単純泉
3.溶存物質総量1,000mg/kg以上で、陽イオンと陰イオンの割合により分類陰イオン/陽イオン ナトリウムイオン カルシウムイオン 塩素イオン ナトリウムー塩化物泉 カルシウムー塩化物泉 硫酸イオン ナトリウムー硫酸塩泉 カルシウムー硫酸塩泉 炭酸水素イオン ナトリウムー炭酸水素塩泉 カルシウムー炭酸水素塩泉 -
温度による細分類 液性による細分類 25℃未満 冷鉱泉 pH3未満 酸性 25℃以上34℃未満 低温泉 pH3以上6未満 弱酸性 34℃以上42℃未満 温泉 pH6以上7.5未満 中性 42℃以上 高温泉 pH7.5以上8.5未満 弱アルカリ性 pH8.5以上 アルカリ性 浸透圧による細分類 溶存物質総量 8g/kg未満 低張性 溶存物質総量 8g/kg以上10g/kg未満 等張性 溶存物質総量 10g/kg以上 高張性 -
温泉法施行規制の改正
- 2005年5月24日、温泉法施行規則の一部改正が行われました。
その背景には、長野県白骨温泉での入浴剤使用偽装表示問題、伊香保温泉他有名温泉での水道水温泉問題等が引き金になっていると思われます。
この改正により、温泉に加水・加温・循環装置の使用・入浴剤・消毒処理等を行っている温泉利用施設は、予め都道府県知事に届出をして、その旨とその理由の掲示(成分に影響を与える項目の掲示)が必要になります。
温泉事業者が追加掲示しなければならない項目内容は次の通りです。 - <すでに掲示済みの項目とその内容>
○温泉の成分等 - 源泉名、温泉の泉質、温泉の温度、温泉の成分、温泉成分の分析年月日 等
- <新たに掲示すべき項目と内容>
○利用上の注意事項
浴用又は飲用の禁忌症、浴用又は飲用の方法及び注意 - ●加水
- 温泉に水(湯、氷、雪を含む。)を加えて利用する場合は、その旨及びその理由を掲示します。
- ●加温
温泉を加温して利用する場合は、その旨及びその理由を掲示します。
●循環・ろ過
浴槽等で使用された温泉を再び浴槽等で使用する場合は、その旨(ろ過を実施している場合は、その旨を含む。)及びその理由を掲示します。
●入浴剤、消毒
温泉に入浴剤を添加し、又は温泉を消毒して利用する場合は、添加した物質の名称又は実施した消毒方法及びその理由を掲示します。
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- 今回、追加掲示を行う際に留意すべき事項は以下のとおりです。
◎的確で正確・分かりやすい掲示内容にする
>>> 温泉利用施設は、大人、子供、お年寄りが利用します。分かりやすく的確で正確な掲示とする必要があります。
◎見やすい場所に備えつける
>>> 温泉利用施設は、大浴場から各室内のお風呂までさまざまです。また、浴槽の設置場所も室内から野外までさまざまです。掲示内容が見やすい脱衣所などに掲示することが望ましいでしょう。
◎浴槽と掲示の関連が分かる ように掲示する
>>> 浴槽内に複数の浴槽がある場合で、加水、入浴剤等の使用を別個に行っている場合には、浴槽の位置図を作成するなどして、浴槽の加水、入浴剤等の使用の関連を掲示する必要があります。また、温泉利用の浴槽とそれ以外の浴槽を有している施設にあっては、温泉利用の浴槽と掲示との関係が明らかになるような掲示を行う必要があります。
- 掲示を行わない場合は虚偽の掲示を行った場合に罰則の対象となります。
温泉法第37条第2号において、「掲示をせず、又は虚偽の掲示の掲示をした者は、30万円以下の罰金に処する。」とされています。
- 温泉に加水、加温、循環装置の使用、入浴剤、消毒処理などを行っていない場合は、届出の必要はありません。
しかしながら神奈川県では、温泉成分に影響を与える行為がまったく行われていない場合その事実を届け出る事が出来、また掲示することも可能です(任意)。
- 今回、追加掲示を行う際に留意すべき事項は以下のとおりです。
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水質汚濁防止法の改正--ホウ素・フッ素問題
- 2001年(平成13年)7月、世界保健機構(WHO)の健康被害報告を受け「長期に亘り摂取すると健康被害を招く」とされるホウ素・フッ素の基準が強化され、水質汚濁防止法の改正で「フッ素およびその化合物」「ホウ素およびその化合物」・「アンモニア・アンモニウム化合物・亜硝酸化合物・硝酸化合物」が追加されました。
その基準値がフッ素8mg/L、ホウ素10mg/Lと定められました。
フッ素・ホウ素は地質的に広く分布し、フッ素はホタル石等に含まれ、虫歯予防に効果的ともいわれ、アルミ電解、光学ガラス、石油化学等で使用されます。
ホウ素は、自然界では、ホウ酸やホウ酸塩として存在し火山地帯には見受けられます。
このホウ素・フッ素排出する事業所として、最も数が多く、排水規制の取り締まり対象とするといわれているのが「温泉旅館」といわれております。
しかしその時点で「低廉な除去装置」がない事から適用は先送りされ、2007年7月まで延期されたものの、環境省では、次の3年間においてこれまで以上に改善を進めるため、産官学一体となってフォローアップに努めることとし、2007年7月以降の取り扱いを改めて延期した。現時点での旅館業の基準値は、フッ素50mg/L、ホウ素500mg/Lと定められております。
従って、この問題が改めてクローズアップされてくる可能性があります。 いずれにせよ、温泉関係者にとっては頭の痛い問題です。
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レジオネラ属菌対策について
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- レジオネラ属菌はどこにいるの
レジオネラ属菌は、世界中の土壌や河川、湖沼等自然界に広く生育しており、一般にアメーバ等の原生動物に寄生している。
この菌が粉塵とともに舞い上がり、温泉や24時間風呂、プール、ビルの屋上等に設置された空調機の冷却塔(クーリングタワー)の冷却水、加湿器等の人口環境水に紛れ込み繁殖する。 一般に25℃~43℃で繁殖し、特に36℃前後がより繁殖に適しているため宿主となるアメーバとの共存により急速に繁殖し、これが感染源となるのです。
- 感染するとどうなる
菌の繁殖している水が微細な水滴(エアロゾル)となり、空中に飛び散ったものを吸い込み呼吸器系に入ることをいう。発症形態は、レジオネラ肺炎(高熱・悪寒・筋肉痛・腹痛・下痢・吐き気・意識障害――重症)とポンティアック熱(発熱・全身倦怠・悪寒・頭痛・筋肉痛―軽症)に別れ、レジオネラ症では高齢者や乳幼児、病人など抵抗力(免疫力)の弱い人や低下した人がかかりやすい。最初は風邪と紛らわしい症状で始まるので適切な処置が遅れやすく急速に悪化しやすい。
- レジオネラ属菌感染の危険性
最適な温度条件化では、菌は容易に繁殖し、感染の危険性が高くなる。特に湯を循環させる方式の浴槽ではその傾向が強くなる。
また、感染源となるエアゾルを発生させる気泡発生装置、ジェット噴射装置、シャワー、打たせ湯や屋外の露天風呂等も感染経路として危険性が高い。
- レジオネラ属菌の殺菌には塩素剤が有効
レジオネラ属菌の殺菌には塩素剤が有効であり、遊離残留塩素濃度0.4mg/L(0.4ppm)のもとで15分で死滅する実験結果がある。 一般に塩素剤は次亜塩素酸ナトリウム(液体)次亜塩素酸カルシウム(別名=さらし粉、顆粒・錠剤)塩素化イソシアヌル酸(顆粒錠剤)の三種である。
- レジオネラ属菌はどこにいるの
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レジオネラ症を防ぐには--神奈川県資料(平成16年3月発行)
- レジオネラ症を防止するため次の条例が改正されました
1. 旅館業法施行条例
2. 公衆浴場の設置場所および衛生措置等の基準等に関する条例- レジオネラ症対策としての主な衛生措置基準
※水質基準:浴槽水等は、規則に定める水質基準に適合するよう管理すること
※水質検査:浴槽水は1年に1回以上、その他使用水は必要に応じて実施すること
※換水:浴槽は原則として毎日、浴槽水を完全に換水して清掃を行うこと
※消毒方法:原則、塩素系剤を使用し遊離残留塩素濃度は0.2mg/L以上とする
※貯湯槽の温度:貯湯槽内の湯水の温度を摂氏60度以上に保つこと
※気泡発生装置:浴槽水からレジオネラ属菌が検出した得は装置の使用を中止する
※点検表作成と責任者設置:自主的な衛生管理を行うため手引書・点検表を作成
※水質検査記録の保管:水質検査記録・遊離残留塩素記録を3年間保管すること - レジオネラ症対策としての主な構造設置基準
※貯湯槽の設備:貯湯槽内の湯水の温度を60℃以上に保つ加湿装置の設置
※濾過器の設置基準:1時間当たりの濾過能力、逆洗浄可能な濾材であること
※気泡発生装置等の構造:空気取入口から土ぼこりが入らない構造であること
※消毒剤注入口:浴槽水が、濾過器に入る直前に設置すること
- レジオネラ症対策としての主な衛生措置基準
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検出した場合の対応
- 10cFu/100mL以上のレジオネラ属菌が検出された場合には、直ちに菌数を減少させるため、施設の清掃、消毒等の対策を講じてください。
また、対策実施後は検出菌数が10cFu/100mL未満であることを確認してください。
なお、清掃、消毒に関する事等不明な場合は下記保険福祉事務所へ相談して下さい。
※お問い合わせは
神奈川県小田原保健福祉事務所 生活衛生部 環境衛生課
小田原市荻窪350-1 TEL0465-32-8000 (内線)3272 -